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地 震 の 音 色(地震にもいろいろあります) [Seismic Technology]

  マグニチュード(M)とは地震の規模を表す数字で震源から放射された地震波の総エネルギーの大きさを表しています。また、震度とは気象庁震度階級のことで、地震の揺れの強さの統一的な基準です。現行の震度階級は平成8年(1996年)に改定が加えられ、0階級から7階級まで(5,6階級はそれぞれ強弱の2階級を設定)の10階級に設定しています。一般的には地震のニュースでマグニチュードと震度を知ることによって地震の大きさ、揺れの大きさを推測することができそれで事足りるのですが、建物の被害まで推測するとなればそれだけの情報では不足しているようです。

  地震とは地盤を駆け巡る振動でありますが、地震によってそれぞれ振動の特性が異なります。振動の大きさだけでなくその他の要素も加わって、それぞれの振動の特性が現れてきます。私たちの周りの身近な振動に例えてみるなら楽器の音の特性(高さ、大きさ、音色)に当てはまります。弦楽器ならばバイオリンとコントラバスの音の違いはほとんどの人が区別できます。バイオリンは高い音、コントラバスは低い音を奏でるので区別できます。これは楽器から出る振動の周波数の違いによるによるものであります。周波数が高いと高音に聞こえ、周波数が低いと低音に聞こえます。地震振動にも、これらの楽器の音の違いのような振動の違いがあります。地震振動の場合、楽器のように人工的に調律された振動ではなく、周波数が高い振動(短周期波)と周波数が低い振動(長周期波)が重なった振動です。振動の重なり具合は、主に震源の条件(地盤の性状、深さ等)、振動の伝播経路で決まってきます。

 

◆バイオリンとコントラバス

  兵庫県南部地震(1995年1月17日発生)と南海地震(この30年以内の発生確率*40%)との振動の特性の違いを先ほどの楽器に例えてみましょう。概ね前者はバイオリンで後者はコントラバスになります。これはそれぞれの地震振動が卓越する周期の傾向からそのように例えることができます。一般的な見解によると兵庫県南部地震の卓越周期は0.3~1.0秒で、南海地震では1~20秒でそれぞれの継続時間は12秒と60~180秒とされています。もうお分かりと思いますが、兵庫県南部地震は短周期波が卓越し、南海地震は長周期波が卓越するといえます。

  兵庫県南部地震では木造住宅や中低層ビル(短周期強振動に弱い建物)の被害が多く、一方高層建物(短周期強振動の影響を受けにくい建物)の被害はほとんど無かったと一般的には認識されています。このため「高層建物は地震に強い」という言葉だけが独り歩きしているように思えます。本当は『高層建物は短周期波が卓越する地震動に強い』と言うべきだと思います。では、発生が懸念されている南海地震が起こればどうなるでしょう。南海地震のように長周期波が卓越する地震動では、中低層建物と高層建物の立場が逆転することが予測されます。前回の南海地震は1946年に発生しました。当時は高層建物なども無く、高層建物への影響は知ることはできませんでした。したがって、地震の揺れによる建物の被害より津波による被害がクローズアップされていました。

  現代の都市が、南海地震や東海地震のような長周期波が卓越する強地震動にみまわれたら、現在の構造設計では、想定していた変形より大きな変形を受けても部材が破壊することは無く、建物が倒壊することは無いと思われますが、上部階の大きな揺れによって建物の外装、内部の家具備品類の落下、転倒、飛散により建物の内外の人命が脅かされることが予測されます。高層建物の他にも長大吊橋が共振現象を起こし大きな被害を受けたり、大型貯蔵タンクの内容液が液面揺動(スロッシング)を起こし溢流したりすることも考えられます。

◆超高層ビル群

◆長大吊橋

◆大型貯蔵タンク

 長周期波を発生させる地震は、規模が大きな海洋型です。振動の到達時間は、短周期の直下型より長いことが予測されます。震源の距離が遠いですから。時間的な余裕があるように思いますが、ここで何が揺らされるかよく考えて避難したほうがいいと思います。例えば超高層ビルの下は安全であるか?私は、長周期波を発生させる海洋型の地震の揺れのもとでは危険であると思います。近い将来発生する確率の高い南海地震や東海地震が発生した時は、兵庫県南部地震での経験が全て役立つとは限らないということを意識してもらいたいです。

*この30年以内の発生確率:平成13年9月政府地震調査会発表データ
一例として日本の交通事故の統計から、30年以内に交通事故による一人の人間の死亡する確率を計算すると0.2%となり、
40%、50%という確率は非常に高いことがわかる。ちなみに年間約10万人が負傷し、誰もが日々危険にさらされている
交通事故でも、30年以内に一人の人間が怪我をする確率はやっと20%程度である。


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コメント 8

nicolas

マグニチュードって「エネルギーの大きさ」なんですね。
だから、揺れとか被害と必ずしも一致しないって、聞いたことが。
確率論は、データとして参考になるけど、必ずしも
アテになるとは限らないのが、カナシイですね・・・

先日の新潟の、柏崎の原発の被害も「想定外」でした。
原発が地震にも絶対安全です・・って、もし言い切れるのなら、
東京湾につくればいいのに。。。って、思います。

「地震さん」にお願いしたいのは、我慢せず小出しに
チョコチョコ小さい揺れをよろしくってコトですね。(笑)
我慢しすぎると、ドカーっと来ちゃうって話ですよね、結局。
by nicolas (2007-10-02 14:59) 

falconB3

にこちゃんさん
早速お読みいただきありがとうございます。
想定外は進歩のもとなので、進歩するということは
想定外がまだまだあるのです。
そうですね、安全が保証されるなら東京湾でもいいのでは
と思いますね。
地震は、地盤が圧縮されて、何かの拍子に圧縮された
部分が壊れる時に起こる振動です。
ゆっくり壊れれば、ひどいことにはなりません。
人間と一緒で、あまり我慢するのも良くないのですよね。
by falconB3 (2007-10-02 19:28) 

長い橋を走っている最中の揺れを連想するだけで、足がすくみますね。

>兵庫県の地震の経験が、必ずしも役に立たない・・・
そうですよね。
周期波も違えば、発生する時間や季節にもよるだろうし、これだから大丈夫!っていうのは有り得ませんよね。

falconB3さん、色んな想定外を想定して、想定内にしないとですね!!
by (2007-10-03 00:04) 

unico

あっ,ナマズちゃん。おーっ!得意の地震ネタ
でましたね~。24号線沿いのバイク屋さんで
金ぴかのナマズを水槽で飼っておられるのを
見たことがあります・・・地震の前だったかも
しれません。まだ生きているかしらねぇ。
阪神大震災では大きな力が放出された・・・
という感じで恐かったです、ハイ。
by unico (2007-10-03 01:43) 

falconB3

ゆき さん
長い橋ならブランコ状態、波打ち状態になることが想定されます。
確かに、想定外を想定して想定内にすることが
私の使命です。装置を造ったわ、あかんかった~では
ダメダメです。
柔かい草の生えた広い原っぱのど真ん中が
最も安全なのでしょうが、そんなこと言ってたら
生活できませんからね。

unico さん
24号線にそんなバイク屋があったのですか?
また教えてください。
岩盤が割れるときに発生する電磁波の乱れを
なまずが感じるときいたことがあります。
なまず地震センサーなんとなく信憑性があるみたいです。
阪神大震災では地震のエネルギーは驚くほど大きなものでは
なかったのですが、起きた場所が悪かったのです。
怖かったでしょうね。
by falconB3 (2007-10-03 08:35) 

falconB3

xml_xslさん
niceありがとうございます。

june33さん
もniceありがとうございます。
by falconB3 (2007-10-03 08:36) 

自分は、生まれてからまだ一度も大地震に遭遇したことがないので、その怖さは身をもって体験していないです。
天災は正確に予測することができないですし、知識と備えが重要ですね。
先日、東南アジアの地震のニュースで、最近作った家屋が全壊したけど伝統的な家屋(竹で作られているやつだったかな?)は大丈夫だったという話を聞きました。
その土地に根ざした生活の知恵なんだなーと関心しました。
by (2007-10-03 13:53) 

falconB3

YUKさん

地震、雷、火事、おやじというくらいですから、
怖いですよ。その日から生活が一変します。
YUKさんも気にしていると思いますが、パンタ号
やうちの連中は、どう地震対策したらよいかですね。
大きなのが来たら恐らくこけるし、ガレージがやわかったら
ガレージの下敷きになります。
こんなこと考えたら眠れませんね。
床からバイクを縛るのが一番簡単かもしれませんね。
東南アジアの地震のニュースの件ですが、そうなんです
やはり伝統的なものが、しっかり造られていれば
大丈夫なんですよね。
日本には五重塔がありますよ。
by falconB3 (2007-10-03 14:20) 

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